2008.11.7

2008 SLOW TRIP Vol.027「 久高島 : THE GOD ISLAND Part.1」

沖縄県那覇市で11月1日からのLIVEイベントに参加するため

前日、僕は単身で仙台から沖縄入りすることにした

2008年10月31日

2008年沖縄 「本当の唄を探して」篇  第1話

日本各地の仲間も31日には那覇に集結して

長年お世話になったLIVEハウスGibsonのマスターの新しい店で乾杯すると聞いていたけれど、

僕は呼ばれているような気がする島へひとりで向うことにした

岡本太郎さんの古い著書「沖縄文化論」を読んだ程度の知識のまま

「神の島」と呼ばれる

久高島へ確実に向っていた

晴天の那覇空港、何度来てもこの爽やかさとは裏腹の

航空自衛隊の戦闘機や最新鋭の戦闘ヘリを見るとなんとも言えない気分にさせられる

14:30着、それからレンタカーを借りる手続きを済ませハンドルを握ったのが15:30過ぎ

久高島へ渡る船の出る安座真港まで僕の頭の中で60分をイメージしていたけれど

渋滞やらを考えると最終の船が出る17:00に間に合うかどうか、。

少し焦っていたけれどこの島にそんな焦りは似合わない

ほらね、安座真港へイメージ通り16:30に到着した

安座真港では野良猫がお出迎え

入浴剤を入れたような緑色の海を眺めていたら

本日の最終便の船がやってきた

ハッチが下がると同時に子供たちが大勢飛び出して来た

そして乗船する。

太陽が沈みそうな安座真港に手を振った

最終の久高島へ向う船の乗客は僕を含め3名、そしてギター1本

しかし、なんなのだろう?

この呼び寄せられる感覚は

まるで一度訪れたかのように迷いも無く向う感覚は

たくましく凛々しい船長らしき男の視線の向こう側に久高島が見えた

南北に細長く平坦な久高島

周囲は約8Kmの小さな島

徳仁港が近づいた

安座真港から久高島の徳仁港間は僅か15分から20分の航海

さて、日が沈む前に宿まで歩こうか

徳仁港を見下ろせる東屋で小休憩

思えば今日は何も食べていないな

さぁ、日が落ちる前に今夜の宿を探そう

見つけた!

「小やど SAWA」

丁度、サワさんが出掛けるところで

挨拶を交わして部屋を案内された

僕は荷物を置いてすぐに散歩に出掛けた

素朴で良いところだなぁ

18:00の時報が街の拡声器から鳴り

「児童は気をつけて帰りましょう」と流れる

どこかしら懐かしい昭和の空気

沖縄、僕が惹かれて止まないのは那覇の大都会、リゾートよりもこの原風景

とは言っても戦時中この島も家屋を全て焼き尽くされた歴史が有り

戦後の建物ではあるのだけれど

僕「何を植えているのですか?」

「ちょっと遅いんだけれどらっきょうね」

僕「島らっきょうですか?」

「そう、島らっきょう」

島の人たちとの会話はごく自然に出来て

この時間わずかにすれ違うおじーやおばーもすべて自然に挨拶を交わしてくれた

集落は徳仁港のある島の南側のわずかな所にだけあって

島の北側は御嶽が点在する神の領域

はぁ、陽が暮れちゃった

宿へ戻ろうか

宿の隣の商店

庭では数人寄り合い楽しげにお酒を飲み食事をしていた

かわいらしい看板

とりあえず横になり天井を見上げてみた

気がついたら時計の針は15分ほど進んでいただろうか

起き上がり庭で飼っている犬のルカリオとしばらく遊んで絆を深めた。

そしてまた外へ食事に出掛けた

食事処とくじん

遅くまでやっている飲食店は島でここだけだ

沖縄そばを食べた。

三枚肉美味いね

別のテーブルで酒を飲む島の人たちの会話は何を言っているのかわからないほどだった

後日聞くに沖縄本島の人にも通じない事もあるらしい。

時折、大きな声になって

「んっ、ケンカ??」と思わせるけれど

良く聞くとそうではなく少年のような優しい会話であったりして

なんだか朗らかな気持ちになった

島の人たちとの交流をちょっぴり期待したけれどそんな雰囲気でもないので

そばを食べてすぐに宿に戻った

宿の部屋に戻ると

ふすま1枚の向こうから

定期的に宿の女の子の声がする

「ギター聞きたいな」

サワさんの声もした

「聞かせて欲しいな」

僕は相棒の古いギブソンのネックを掴んでふすまを開け広間へ向った

「挨拶がてら歌わせてもらっていいですか?」

とても歓迎され

そしてサワさんの家族の前で歌った

数曲歌った

僕が吠えて来た世知辛い街で暮らす唄じゃない

最近生んだ柔らかい唄たちを

「あぁ、この瞬間のためにも必要な唄を生んだんだなぁ」

後に考えると、そう思えた。

サワさんの家族はみんな真剣なまなざしを歌っている僕にくれた

メロディに身体を揺らしてくれ

そして歌詞をよく聴いてくれた


宿になんとも言えない優しい空気が流れてた



サワさんが突然
言った

「酋長に会いました? 酋長呼びましょう!」

僕は何がなんだかわからないでいると

サワさんは電話をかけはじめた

この島には琉球民謡と古から伝わる久高の神歌を継承する久高の酋長と呼ばれる人物がいて

僕と話がきっと合うはずだと会わせてくれると言うことだった

けれど酋長は先月退院したばかりで調子が良くなく

21:00をすぎたこの時間にはつらいので明日11:00に来てくれることになったとサワさんが言った。


そう話を伺っていたら

ベランダから酋長とお弟子さんが三線を片手に現われて驚いた!




なんとも驚く中、

言葉を選ぶことも出来ない俗な僕は

また挨拶代わりにギターで一曲歌うことしか出来なかった

恋の唄「明日に鳴るといいな」

全員優しい顔をして歌っている僕の目を見ている


そしてハーモニカで終わると笑顔で拍手をしてくれる

酋長が語る

「これはノスタルジーか」

お弟子さんが話す

「現在進行形の想いだと思っていたら最後の詞を聴くと、」


心を開いて僕の唄を聴いてくれたことに感動した

そして、酋長とお弟子さんが三線で歌ってくれた

それは僕が語るのも烏滸がましいが

「本物の声」であった

当然そのまま聴いても言葉の意味は伝わらない

でも何故かどういう気持ちの唄かがわかる

それだ!!

唄い終える度に僕は唄の内容を質問した

溢れる歌謡曲のようなストレートな歌詞ではない

情緒的でユーモアがあって美しい

そう、美しいんだ!

僕は琉球民謡に取り憑かれたのではない

もっと奥のことだ

酋長の音楽を僕も心を開いて聴けたことに喜んだ

この美しさこそ

「本当の唄」だ

まだ調子が万全じゃない酋長が突然降り出した雨を気にして帰られた

なんというありがたいことだ、出向くのが礼儀であろうに

訪れてくれるなんて!


その後も一晩中サワさんたちと酋長のCDを一緒に聴いた

みんなで意味を確認しながら。

「なかなか酋長CDを売ってくれないけれどケンイチさんなら大丈夫」

明日酋長のところへ行ってみよう。


不思議な夜だ

久高島に来た理由がわかった



部屋で貰った蜜柑を食べた

外はスコール

虫の羽を擦る声

ヤモリの声も




それらが感動でグルグルしていた頭の中を整理させる

 

今夜はそろそろ休もう

KENICHI KIKUCHI "2008 SLOW TRIP Vol.27"